横須賀へ、浦賀へ

dadawo2008-09-15

3連休を使って約3か月ぶりの関東へ。お金はないが、もう少し頻度を上げたいものだ。
横須賀へ、浦賀駅からバスで横須賀美術館へ。前から行こうと思っていただけに、やっとだ。こんな長閑な街に黒船来たら、さぞかしたまげたことだろう。
まずは企画展について、『ライオネル・ファイニンガー 展』。
最近観た画家の個展の中では、最も面白かったと断言できる。
カンディンスキーやクレーと同じくバウハウスで教鞭をとった経験のある人物だが、作品から受ける印象はどちらの作家とも異なる。
同じ抽象絵画という枠組みに入りながら何処が異なるのか?ファイニンガーの作品は非常に風景画が多い点で独特であると言えよう。
展覧会のサブタイトル−光の結晶−通り、幾何学的に分割された光景が、(基本的に淡い)様々な彩度の色で塗り分けられ、それぞれ透明性が持った光を放っている風景画、である。
面白かった理由は主に二つ。
一つは、20世紀ならではと言えるかもしれないが、時代の変化と歩幅を合わせるが如くに用られている表現方法の変遷が著しい(最初は漫画まで書いていた)にも拘らず、同じモチーフが多々使われ続けていることである。
作家の模索、即ち一つの風景において何を真に表そうとしたかを、おぼろげながらも感じることができる。
もう一つは、ファイニンガーが描く風景画には絶対と言っていいほど建築物が含まれている、寧ろメインとなっていることだ。
その光景を幾何学的に分割して光を与えられた絵画は、当時の都市を、建築を考える上で非常に興味深いものばかりである。
全ては建築に収束することを目標に掲げたバウハウスで教授をしていたファイニンガーである。その風景画には建築・都市に対して理念や問いが投げ掛けられているとしか思えない。
しかし、具体的にファイニンガーによって表現された都市像はどの様なものかは、今の僕には全然掴めていない。


さて、横須賀美術館の建築。これはとても感動的であった。
これまで実際に訪れ、感動した美術館建築はいくつかあるが(地中美術館金沢21世紀美術館、海の博物館、土門拳記念館等)、それらと比べてもこの美術館は凄い。山本理顕凄い。
何が凄いのか。あのロケーション(美術館HPのホームを見れば分かります)でもってこの建築は、一方で正面の海に対して(僕にとっては最大限に)開かれており、他方で屋上広場に上ると立ち現れる山の荘厳さ、静寂さを感じることができるつくりとなっている。
単に場所が贅沢だからと切り捨てることはできない。感嘆すべきは、この素晴らしい環境にコッミトできる(ロケーション負けしない)建築を造り上げた山本理顕の力強さである。
ガラスと鉄板を通して大小の丸穴から採り込まれた自然光と無角の壁が柔らかさを演出している内部空間も訪れる人たちを楽しませ、心を落ち着かせてくれる。
何より僕が感動したのは、展示室から出てエントランスの方を見た時、一面に広がる海の中を漂う白いヨットが、白い壁面にある円形のエントランスの中に映っていたのである。涙が出そうだった。写真はヨットありませんが。
 
この美術館で山本理顕が目指した、地域社会の強いシンボル性のある建築、が十分過ぎるほど達成されている建築であった。