寒い3月末

昨夜は六本木アートナイト。いろいろ考えさせられた。森美術館でやっていたShing02と美術家のパフォーマンスはかっこ良すぎて、最高だった。あの空気が良かった。
東京に住み始めて1年になったが、六本木という街には未だに馴染めない。馴染める時が来るのだろうか。今度自転車で行こう、都市のシークエンスの中で観るとまた違うかもしれない。僕の中で、六本木は未だ陸の孤島


観てきた建築
根津美術館:表参道や青山のブランドビルを通り抜けると、突き当たりに高級料亭(?)のような建物が見える。木々を塀にした切妻の、周辺とは趣を異にした美術館。今まで観た隈研吾の作品の中では最も素晴らしい、と確信を持って言える建築。贅沢に幅が取られた美術館へのアプローチに、まず驚く。都会の喧騒と緩やかに切り離していく、古美術の収蔵品を観に来る人たちに対する素晴らしい演出。館内も、あらゆる空間がこだわりを持って設計されているのが分かる。エレベーターはちょっと贅沢過ぎてびっくり。裏の庭園に出た時、何故このような切妻の美術館なのかに納得させられる。本当にここが東京の青山の一角であるのか疑ってしまうような贅沢な庭園。そこに建てられたミュージアムカフェも素晴らしかった、外から観る様子も、実際に中にいても。気になったのは、屋根。瓦から出ているスチールのようなもの。庭園の既存を建物に習った転写かと思いきや、本で見るとすっきりさせたかったとのこと。けど、あれは瓦だけでまとめた方が良い気がする。けど、総じて素晴らしくて、隈研吾の力作中の力作だと思う。昨年コンペを勝ち取っていた浅草の施設も楽しみでならない。
 
 


最近読んだ本:小説ばかり。これも今月いっぱい。そろそろ建築モードにしたい。
「生きてるだけで、愛。」:うーん、面白いけど、何か演劇的な匂いがして、舞台上で表現される光景が想像される。劇作家の枠を出ていない気がして、小説としてどうなのか。けど、面白いことは確か。

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」:こちらはとても刺激的。戯曲の枠を超えて、小説作品としての完成度を感じる。この差は何なのだろう、と、これはしっかり考えたいところ。だから、岡田利規の小説も早く読まなくてはと思うのだけど、高橋源一郎の解説は、なるほど。絶望感、これは一つ大きな因であろう。けど、他のこともある気がする。
終盤の、終わる。の連呼とかは、ちょっと舞城王太郎?と思ってしまう。すごく良いんだけど。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

「キミは珍獣(ゲダモノ)と暮らせるか?」:飴屋さんの舞台作品を初めて観る頃に買っていた本。最初、おれは一体何を読んでいるんだ、となるが、何かハマってしまうものがあり、楽しく読了。可愛過ぎるイラストと、珍獣への愛が伝わってくるのが楽しさの要因か。

キミは珍獣と暮らせるか? (文春文庫PLUS)

キミは珍獣と暮らせるか? (文春文庫PLUS)

「わたくし率 イン 歯ー、または世界」:祝、芸術選奨新人賞てことで読む。ヘヴンを読んだ後に読むと、この文章スタイルで続けるべきでないし、続けられない。ヘヴンで文章が平易になって残念なようなレビューも見かけるが、あの刺激はどうせ続かない。寧ろスタイルではなく、この作品とヘヴンに通底する作者の思想を強く感じた、のは、両短篇とも終盤の独白(だっただろうか)の部分。これが、この作家のコアであって、スタイル先行ですぐ消えてしまうような作家ではない。次作も楽しみでならない。

わたくし率 イン 歯ー、または世界

わたくし率 イン 歯ー、または世界